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舘村歯科クリニック・
TOUCH口腔機能回復室
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ことばが正しく聞こえるためには,鼻腔と口腔は分離されている必要があります.鼻腔を口腔から分離する役割を担うのは,軟口蓋(口蓋帆)です.口を開けて/ア~/と発音したときに,口の天井(口蓋と言います)の奥で上に持ち上がる部分が軟口蓋です(下左の図).
食べ物を飲み込むときには,食べ物を口から咽頭に送り込む動作が必要ですが,咀嚼中には軟口蓋は舌と接触しているのですが,送り込みの段階で軟口蓋は挙上して咽頭への入り口を開放します.この軟口蓋が欠損したり,神経筋機能の問題で持ち上がらなくなると鼻腔と口腔は分離されなくなります.
口蓋帆咽頭閉鎖機能とは,一般的には「鼻咽腔閉鎖機能」と呼ばれています.英語では,Velopharyngeal Function (VPF)と綴ります.原語に忠実に訳すと,「口蓋帆(Velum)で咽頭(pharynx)を閉鎖する機能(Function)」となりますので,本来は口蓋帆咽頭閉鎖不全症という病名が正しいのですが,なぜか本邦では「鼻咽腔閉鎖不全症」という名前で呼ばれます.すなわち,このVPFが正常であることが,ことばでコミュニケーションし,安全に嚥下する上で必須であるということです.
軟口蓋の持ち上げを担う筋肉は,唯一口蓋帆挙筋だけです.すなわち,口蓋帆咽頭閉鎖機能の良否は,この口蓋帆挙筋の機能次第ということです.
口蓋帆咽頭閉鎖不全症とは,一般的には「鼻咽腔閉鎖不全症」と呼ばれています.英語では,Velopharyngeal Incompetence (VPI)と綴ります.原語に忠実に訳すと,「口蓋帆(Velum)で咽頭(pharynx)を不十分(incompetence)にしか閉じることができない症状」となりますので,本来は口蓋帆咽頭閉鎖不全症という病名が正しいのですが,なぜか本邦では「鼻咽腔閉鎖不全症」という名前で呼ばれます.
すなわち,VPIとは,①軟口蓋が短くなった(例.軟口蓋腫瘍後,外傷など),②神経筋障害によって口蓋帆挙筋の機能が低下した(脳卒中,外傷性頭部障害,神経筋難病,等)によって,軟口蓋の機能障害によって口腔を分離できなくなった状態を言います.
VPIと診断された場合,ことばや飲み込みの問題が生じるので,リハビリテ-ションすることになるのですが,残念ながら訓練担当者の示す課題を模倣するだけのリハビリテ-ションではほとんど効果がありません.
その理由は,VPIになると正常に分離できていないと身体が判断し,口蓋帆挙筋の活動を高めようとするため,口蓋帆挙筋が疲労するためです.一般に,正常なVPFである場合には,ことばを話す上で必要な口蓋帆挙筋活動は最大筋活動の30%程度です.この程度の筋力では疲労することはありません.しかしながら,VPIになると70%以上の筋力を使うため疲労しやすくなり,負荷の大きな訓練を行うと却って口蓋帆挙筋は疲労して訓練効果は期待できなくなり,障害が固定されてしまいます.
VPIのままでの訓練は危険であるということです.リハビリテ-ションだけでは問題が生じます.すなわち,まずVPIを改善した上で訓練を行うことが必要であるということです.
VPIの診断後にまず行うべきVPIの治療には,大きく分けて①口腔内装置と②手術があります.しかしながら,全身状態の制約があったり,VPFの機能改善に応じて治療内容を調整することができる点からは口腔内装置の利用が望ましいと思われます.
装置のメリットは,口蓋帆挙筋の疲労を軽減できることにあります.すなわち,機能が低下して軟口蓋が十分に持ち上がらなくなっている状態の時にPLP等の装置で軟口蓋を挙上することによって,口蓋帆挙筋の活動を支援することができます.すなわち,下肢機能に問題がある場合,クラッチを使ったりステッキを使うことによって,下肢機能に関わる筋肉への負担を軽減することで訓練効果を上げることができるということと似ています.その結果,装置装着した状態での訓練では疲労を生じることがないために訓練効果は高まり,訓練期間も短縮できます.さらにVPF機能が改善されれば,装置自体を撤去することができます.
実際に装置を装着した場合に口蓋帆挙筋活動を下に示します.
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